2006年 Halloween Day
サンフランシスコの生活もちょうど一年。今年はシンデレラになりました


月刊「もん」第3回目

                   
― 笑満
(エマ)が私たちと出会った理由(わけ) ―

2006年は、笑満と私たちにとって初めて親子として生活した一年間でした。2歳半になってプレスクールにも通いだした笑満は色々なことを学びはじめ、ハロウィーンではお友達とパンプキンパッチでかくれんぼをして遊んだり、シンデレラのコスチュームでジャパンタウンのお店を歩き回ってお菓子を貰うといった体験に、最初はおっかなびっくりで「ありがとう!」という言葉さえ出なかったのが、数分もするとお腹の底から「Trick or Treat!  Thank you!」と大声を出すわが子を見て、「子供は一瞬のうちにも成長するんだね〜」こんなことを感心している私たち“一年生”両親でした。

子供たちの憂鬱な日
前号で紹介した長谷部先生のお仕事に便乗して児童養護施設と乳児院訪問に同伴させて頂きました。児童養護施設とは、何らかの事情で親と暮らせない児童が3歳から18歳になるまでの期間を過ごす施設の事です。最初に訪問したのは山間の街、郡上市にある施設でした。

訪問したのが午前中だったこともあって、施設内は非常に静かで小学生以上の子供達は近くの学校へ登校しています。代わって私たちを迎えてくれたのが、元気のいい3歳児たち。男の子2人と女の子1人の三人組でした。私たちの足元に転がるようにやってきた子たちは、「おじさん、遊ぼうよ〜」と初対面にも関わらず足元にまとわりついて離れようせず、とうとう職員室までついて来てしまい、私とレスリングまがいの遊びまでするハメになったのです。

私の想像した養護施設のイメージは正直なところもっと殺伐としたものでした。ちょっと非常識な質問でしたが、私は施設長に尋ねずにはいられませんでした。「幼くして辛い背景を背負った子供たちなのに、どうしてこんなに明るく他人に振舞えるのですか?」施設長からの回答は、「みんな安心しきっているからです。ここを訪問する“親以外”の人達は皆優しい人達だと信じているのです。」この子たち三人は、親からのDV(ドメスティックバイオレンス)とネグレクト(養育の放棄)を受けて施設に来ました。テレビのニュースで見たり聞いたりするだけだった“DV”とか“ネグレクト”といった特殊な英語が、こうした田舎でも施設の中では常時使われている事が少々ショックでした。子供にとって自分の親と一緒に居るということは、この上ない安心感が与えられるはずなのに、ここで生活する子供たちにとって、親が面会にくるというのは、いわゆる憂鬱な日なのだそうです。とても悲しい現実ですが、走り寄ってきた子供から受けた“明るい印象”の裏には計り知れない重たい事情があったのです。 

「親には会いたくない」それが子供から発信された本当の気持ちではありません。子供とは、親の膝の上で飛んだり跳ねたり、胸に顔をこすり付けて甘えたり、お父さんお母さんの背中に耳をあてて心の鼓動を聞きながら育っていくのが子供の本当の姿だと思うのです。 この子たちが「こどもらしさ」を取り戻すために、親がそんな簡単なことに早く気付いて、子供達が安心して暖かい家族という環の中の生活に戻れる日が一日も早く訪れることを願わずにはいられませんでした。

9月から始まった連載もこれが三回目となります。次回から笑満と出会った「乳幼児ホームまりあ」での出来事を紹介します。この世に生を受けて3日目から485日間過ごした施設であり笑満の故郷でもあります。ここでの笑満との出会いと私たちに硬く決心させたある事実に触れていきたいと思います。

終わりに、新しい年2007年が読者の皆さんにとって希望に満ちた幸福な一年となりますように心からお祈り申し上げます。



青木信哉
Aoki USA, Inc.代表 & 翻訳家
Emasmile@aol.com