月刊「もん」第9回目

                   
― 笑満
(エマ)が私たちと出会った理由(わけ) ―

「養護施設を家族・家庭と呼ばないで」というキャンペーンがあります。子供時代を施設で過ごさなければならなかった悲しみを次世代に引き継いではいけない。施設という集団生活で育った事実をごまかされたくない。より多くの家族のない子供たちが里親家庭で育って欲しい。そんな願いからこのキャンペーンが立ち上がりました。

2005年の全国統計では、親が育てられない子供は34701人、その内92%の子供は家庭ではなく乳児院や児童養護施設で育っているそうです。ところが子供には家族と暮らす権利があるにも関わらず、大人たちはこういった施設を美化するため、そして子供たちを施設に送り込んだ後ろめたさから、施設は暖かく包み込んでくれる“大家族”だとか“家庭”と表現する人たちがいます。しかし、それは大人たちのごまかしでしかありません。幼少時代を養護施設で送り家庭の温もりを知らない子供たちにとって、一度きりの子供時代を失った悲しみは計り知れないものがあるでしょう。

ぬくもりのある生活へ、長い道のり
笑満との再会とともに、「必ずお家に連れて帰る」そんな約束を果たすために、限られた時間内にお役所や裁判所を奔走する毎日でした。

以前お話したように施設にいる子供との養子縁組は里親登録をするのが条件です。しかし、私たちのように住民票がない者にはその条件は満たせません。施設にいる子供たちを養子にするには、その施設つまり「まりあ」が笑満の親代わりのため、里親登録が必要になってきますが、親(個人)同士で養子縁組を行う場合はその必要はありません。そして子供相談所(子相)の担当官が出した策案で、母親と私たちとで直接養子縁組することで里親登録の問題は決着しました。

次のステップは裁判所への縁組審判の申し込みです。まず家庭裁判所の調査官は二人の希望が一致していることを確かめるために私と妻を別々に面談しました。養子縁組について何も知識のない私たちがここで教えられたことは、日本の養子制度には“普通養子制度”と1988年に新しく施行された“特別養子制度”と呼ばれる二つの制度があるということでした。その2つの制度についてお話したいと思います。

普通養子制度
従来の“普通養子制度”は親権が養親に移行しますが、実親との関係は断たれることがないため、戸籍上も親が2組存在する事になります。“普通養子制度”の利点としては、手続きがそれほど複雑ではなく3ヶ月もあれば裁判所からの審判がおります。しかし、実の親との関係が保たれているので財産を相続する権利がある反面、親に借金が残った場合は、その債務を子供が引き継ぐことになります。また、数年後、実親の生活環境が改善され養子に出した子供を取り戻しにかかったり、例えば子供が有名スポーツ選手になったりすると、悪い親であれば「脅し」まがいの嫌がらせを養親に対してしたりということも考えられます。養親は手塩にかけた“わが子同然”の子供をこのような事情で最悪の場合手放なす事にもなりかねません。 

次回は「特別養子制度」についてお話します。規則や法律について語ることは少し退屈なのですが、もしこれから日本で養子を迎えようとお考えの方には、記憶の片隅に情報としてしまっておいていただければと思います。



青木信哉
Aoki USA, Inc. 代表 & 翻訳家
今までの連載は、www.aoki-usa.com で読むことができます。